「採用が、なかなかうまくいかない──」
これは、拡大を目指すスタートアップが、共通して抱える悩みかもしれません。
時代は変わり、採用の風景も変化しています。現代は、“採用難”、“売り手市場” といわれ、多くの企業が、人材確保に苦心しています。
スタートアップにおいては、その影響はより顕著です。
そこで求められるのが、「候補者の過去ではなく未来を見透す採用力」といえます。
この記事では、スタートアップの採用に焦点を当て、いま何ができるか、具体的に考えていきたいと思います。
筆者自身、スタートアップの企業で、採用に関わってきました。
その経験から、「未来を見透して、ときにはパターンから外れた人材も大胆に採用すること」が肝要だと考えています。
ここでは、“未来志向の採用戦略” と呼ぶことにしましょう。
通常の採用方法では、「経験」や「既存のスキル」が重視されます。
たとえば、以前の職務経験や特定の保有スキルが、評価の中心です。
しかし、スタートアップの採用では、「これらを求めすぎると、まったく人を採用できない」という現実に直面します。
大手企業や実績ある企業に比較すると、まだ採用競争力が弱いからです。
と同時に、「これらだけでは、不十分」という見方もできます。なぜなら、スタートアップは環境が常に変化し、柔軟性と革新的な思考が求められるからです。
未来志向の採用戦略で重視するのは、候補者の「過去」や「現在」ではなく「未来」です。
潜在的な成長可能性や創造性、新しい環境への適応力を、十分に見極めます。チームとの文化的な適合性も、採用の重要な要素となります。
以下は、筆者が在籍していたスタートアップで、採用プロセスで使用していた評価項目のイメージです。
一方、筆者自身が経験した失敗は、スタートアップが急成長する際に、即効性を重視して採用拡大したことです。
人材を育てる余力や時間がない状況では、それが最適解のように感じられました。
しかしながら、実際には、会社のカルチャーが崩れ、メンバーが見ている方向性がブレ始め、業績が低下して離職率が高まりました。逆効果だったのです。
この苦い経験から、短期的な成果よりも長期的なポテンシャルを重視する採用戦略へ、大きく舵を切りました。
結果は、こちらが正解でした。
成功するスタートアップには、組織の成長ステージごとに、伝説的なメンバーが現れるものです。
長期的なポテンシャルを重視した採用を続けた結果、会社の歴史に名を刻む貢献メンバーに、出会い続けることができました。
では、具体的にどのように、候補者の未来を見透せばよいのでしょうか。
ここでは、3つの方法をご紹介します。
1つめの方法は「未来の可能性を探るための質問」です。
未来志向の採用戦略では、候補者の過去の経験よりも、未来への可能性を知るための質問を増やします。
職種やポジションによって、何を聞くかは異なりますが、一例を以下にご紹介します。
2つめの方法は「適性検査の実施」です。
適性検査は、候補者のさまざまな側面を評価するための強力なツールです。
たとえば、論理的思考力、問題解決力、対人関係スキルなど、職務に必要な能力を多面的に評価できます。
出所)適性検査 eF-1G(エフワンジー)
https://www.e-falcon.co.jp/ef-1g
面接の質問だけでは、どうしても生じてしまう「ムラ」を最小限に抑えるために、適性検査と併用することが役立ちます。
3つめの方法は「ソーシャルメディアの活用」です。
海外では、LinkedInがビジネスSNSとして定着しています。
グローバルな採用活動であれば、候補者のLinkedInを確認することで、人物像や関心・経歴などを、多角的に捉えやすくなります。
日本でも、2022年8月に「日本での登録メンバー数が300万人を突破」とのプレスリリースが公開されており、利用価値は高まっているといえるでしょう。
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LinkedIn以外にも、YouTube・Instagram・Xなど、発信者として活動している候補者であれば、それらを通じて、より深く人となりを知ることができます。
採用は、スタートアップにとって、成功への道を切り開く鍵です。
最後にひとつ付け加えるなら、人材を選り好みするのではなく、
「出会ったご縁のある人と、よりよく仕事をするための、会社側のスキル」
こそ、スタートアップが磨くべき力かもしれません。
一定の基準を持って採用活動を行ったなら、その後の成果は獲得した人材ではなく、会社に依存している点を、あらためて認識したいところです。
採用プロセスの核心は、優秀な人材を選ぶことではなく、出会った人材とともに成長し、企業文化を形成していくことにあります。
伸びしろの大きなメンバーと、お互いのポテンシャルを最大限に引き出し合いながら、会社の成長を実現していただければと思います。