お客様とプロの声

「時代変化とともに変容する、組織や人の在り方 
~テクノロジーの進化からみえてきた、人であることの必然とは?~」

2017/06/13

  • 語り手
    HRコンサルタント 金丸美紀子氏
  • 聞き手 株式会社イー・ファルコン
    採用選考支援ユニットリーダー・ ソリューションパートナー 涌井菜月

※登場する方の所属企業、役職等は当時のものとなります。

価値観の合う人とのつながりを求める学生たち

涌井:前回弊社のメルマガにて、18採用の学生傾向をデータから分析し、考察を行いましたが、実際に現場の方々が日々感じていらっしゃる変化について、今日は金丸さんの実感値からお聞かせいただければと思います。

金丸:イー・ファルコンのデータを拝見すると、大きなサマリーで、素直で人当たりの良い方が増えているとか、関係性の質的な変化に関するコメントがありましたが、私も同様に感じています。経済環境や教育などの社会的背景、デジタルネイティブでSNSによるつながりが強い、などの影響が大きいのだろうと思います。価値観の合うコミュニティに属していたいという意識が強く、コミュニティも昔はほぼ会社、あるいは家族だったものが、会社は同じでももっと他に自分が心地よいと感じるコミュニティにいたいとか、つながりが人生においてとても重要になっています。関係性の質を重視する中で育っているので、その価値観をもとに仕事も住む場所も考えるという人が多く、人の気持ちに敏感で、関係性の良し悪しに反応しますね。

涌井:最近よく耳にする傾向の一つとして、若年層社員は、受容されているという安心感を大切にしており、上司からの指摘や指導に対して、存在そのものを受け入れられてはいないのではないかという不安の方が先立ち、言われた内容を受け止め、具体的に行動改善するまでに至らないというお話を伺います。やはり、相手との関係が確固たるものとして結ばれていることが前提にないと、その先のマネジメントや育成のための関わりは、より難しくなっているのかなと思います。

金丸:それはおのずとそうなると思います。昔は関係性が確固たるものではなくても、タテ社会のポジションやパワーが強く、会社だから仕事だから当然という価値観でやっていたから、それほど意識しなくてもよかったですよね。
でも、今の若い人は違う。共感して欲しい、気持ちを分かって欲しいという思いが強く、一見すると面倒くさい(笑)、マネジメントしづらいと思うかもしれませんが、実は彼らはとても人間らしく、自分の感情に素直なだけなのだと思います。そして、これは若者に限った話ではないようにも思います。 テクノロジーの進化でAIなどが入ってくると、最終的に人間である必要性は、感受性や共感性とか、ヒューマンな部分しか残らない。ロジカルなところや分析や効率化は、どんどんテクノロジーやAIにとって代わられた時に、人間として重要になるスキルや能力はむしろそこで、今の若い人はそういう時代に順応しているのではないかと思います。私たち世代はその一世代前なので、昔の世界観でものを語りがちですが、もう世界のルールが変わったのだから、それを前提に今の社会においてそういうこと(感受性や共感性)を重要視する人たちに対してどういうコミュニケーションをとったらよいのか、私たちがどう変わるのかを考えた方がいいように思います。

涌井:そうですね。どうしても今の自分たちの中にはまってもらおう、本人たちの認識を変えて今の状態を受け入れてもらおうという角度で見てしまいがちですね。若年層とのギャップを埋められないということに対して、世代間ギャップという話に行きつくことが多いですが、むしろこれは世代を超えた時代の流れの中の価値変容であり、上の世代の方がそこに追いついていないだけかもしれません。

金丸:もちろん会社という枠組みで仕事をする以上は組織のルールがあって、足りない部分には教育が必要です。でも、フリーランスやパラレルワーカーという多様な働き方が増えてきて、100年ライフになっていく時に、間違いなく時代は変わっていきます。若い人のセンシティブな部分は利点でもあるという観点に立って、会社の仕組みや在り様、組織と個人の関係性を見直すと、これからの社会で働く人がハッピーになるのはいったいどんな会社だろう、という発想になりますよね。今はその途上でいろいろな価値観が混在しているから難しいという話になっているだけかなと思います。
今の働き方や会社のルールの中では、最近の若者の傾向値はネガティブにとらえられがちですが、少し見方を変えてみると、時代に適応したいい資質が進化しているのではないかという気がしないでもありません。もちろん、採用の現場ではそんな長期的な展望よりも喫緊に解決しなければならない課題が山積ですが、大きな流れで見ると、18採用以前の学生が持っていた資質や能力が単に減っている、というものではないと思います。

変化する時代を見据えた、人事戦略のあるべき姿

涌井:時代の変革期をまさに今迎えているとすると、組織としてどのような人材を採用し育てていくのかを考え続けることは非常に重要ですね。

金丸:そもそも横並びの採用計画や求める人物像が言語化されていないなど、採用活動や採用担当者の問題というのは以前からずっとあります。ただ、これから益々AIが入ってきた時に、仕事はどう変わり、人間は何をしているのだろうと考えてみると、人間ならではの心とか共感、センシビリティやクリエイティビティといったものしか価値がないような気がします。そうした時に、今の人材要件や組織が期待する能力の中にはAIの方が得意なものが出てくるでしょう。

涌井:その捉え方はとても大切ですね。多くの企業で活躍人材要件の棚卸しが定着し始め、一般的に求められる要件に加えて、自社独自の要件を持つことが一般化されつつあります。しかし、これまでお話してきたような時代の変化をふまえると、その活躍は現在に置くのではなく、10年50年先に会社が存続する未来に向けて求められる活躍像を今から準備しておくべきですね。

金丸:その通りだと思います。例えばホテルのホスピタリティのように、その業界によって採用基準はいろいろあると思いますが、未来の社会や仕事、そしてその時代を生きる人達の背景や価値観を想定した上で、各業界・各社独自の人材要件を今まで以上に考えていかなければならないですよね。
テクノロジーの活用がもっと進んで、採用にもAIが入ってきてどんどん共存していっても、「人」は無くならないと思っています。人である価値は何かを突き詰めていくと、採用で重視しているものは今と違ってくるかもしれません。例えば論理性なども後からトレーニングできる能力ですよね。私自身、ビジネスシーンではある程度論理的に話ができると思っていますが、自分が社会に出た時はどうだったかというとそれほどでもなかったわけで、これは後から身につけたスキルです。ロジカルシンキングを学んで日常的に物事を構造的に考えるとか、話すことの大きさを切り分けるだとかトレーニングでできることです。面接の時にこの人は論理的だといっても、それが後々どのようにパフォーマンスに影響するのかといったら、一部の企業を除いて実はそんなに検証されていないのではないかと思います。
現在の採用でさえ、入社時に備えておいて欲しい能力、つまり採用時に見るべきものと、入社後育成可能な能力が混在している場合があり、なおさらそれが十年、二十年経った時に、人として持っていて欲しい資質や自社にとって有用な能力とは何かを突き詰めていかないと採用はますます難しくなっていくのではないでしょうか。人間を見る時に一つの手法だけで測れる客観的指標はそれほどないので、AI、面接、アセスメントなどをきちんと見て、主観データ(これまでの人事の経験や実践)と客観データ(アセスメントなどの活用)とをいかに上手に組み合わせていくかをもっと真剣にやらないといけないと思います。

採用・育成・配属と、未来まで一気通貫で見る

涌井:先ほど、採用時にみるべきものと入社後にトレーニングできるものというお話がありました。近年、売り手市場が続き、求める人材要件を満たす人材に出会えることは少なくなってきていると思います。このような時こそ、求める人材として掲げる要件の中でも、採用時に譲れない要件とは何か、自社で育成・開発できる要件とは何か、を明らかにしていくことが重要だと感じています。

金丸:採用時の評価と入社後に活躍している人材の評価が一致しているかというと、実感としてはそれほどではないと思うんですよね。小規模の会社だと採用、配属、育成が一貫して見られると思うのですが、ある程度の規模になると採用は採用、教育や評価は別という様に組織が分断されているので、一気通貫で経年的な分析を行うなど、データを活用できていないということが課題だと思います。

涌井:今まさに、そのデータ検証の部分をお客様と話すことが増えてきたと感じています。入社後、期待した人材はハイパフォーマーとなり活躍しているのか、ある程度感覚的には把握しつつも、データを用いた検証活動の実現には我々もまだまだ届いていません。

金丸:そこが出来ているかできていないかで、企業の採用力とか育成力の大きな差になっていくと思います。
先ほど申し上げたように、テクノロジーの進化や意識の変化が著しいこの時代はまさに変革の過渡期にあると思っています。新しい働き方やAI時代に人はどう価値を発揮するのか、人材マネジメントはどうあるべきなのか、トップがビジョンを示せないと、現場はパーツパーツの話に終わってしまいます。貴社のような人材業界全体がその機運を高めていく大きな流れをつくっていくのではないでしょうか。

新しい人材を採る意味を全社で共有できているか

涌井:ある人事担当者の方から、今の主幹事業が将来シュリンクしていくことは分かっているので、まだ体力のある今のうちに事業創造力のある人を育てておきたいという話を伺いました。会社存続という観点から未来に向かって、組織や人材を捉えることが始まっていると感じます。

金丸:今企業の管理職になっている世代の中には、なかなか過去の成功体験を忘れられない人たちもいますよね。古い価値観と新しい価値観が混在しているから、なかなか変革が進まない面もあるのではないでしょうか。

涌井:そうですね、ただ企業が大事にしてきたもので不変的に残した方がいいものもあるわけですし、そういった理念や価値観を少しずつ言語化して全社で共有されることが大事なのではないかと思います。採用担当の方々も今はいない人材を採用しようといろいろ工夫していらっしゃいますが、実際に採用すると既存社員との質の違いから上司の方は苦労されますし、入社された方もそこで力が発揮できないということが起きてしまう。全社の共通認識のもとに採用から受け入れ、育成まで通貫してやっていくことが欠かせないと思います。

金丸:私も採用を担当していた時、会社のカルチャーを変えようと今までとは違うタイプの採用にトライした時がありましたが、全社員の数パーセントにしかすぎない新人に会社のカルチャーを変えてもらおうと思ったのがそもそも間違っていたと思っています。自分たちが変えていないのに、なぜ新人に変えてほしいと思うのか。新人は一つのきっかけであって、経営や人事が会社全体のカルチャーをどうやって醸成するのかを考え続け、継続してやり続けるという不断の努力がないといけないと思います。
なぜ「○○な」人材が必要なのかを、組織全体にきちんと共有したかということ。そういう人材を採る大前提を共有しないと「なんで?」という話になります。地道な組織開発と採用の両輪でいかないといけないわけで、どちらか一つに頼っては駄目だと。先ほど一気通貫での人材マネジメントの必要性についてお話をしましたが、ここでもやはり、貴社のような外部パートナーの力を借りながら組織の問題を「見える化」し、それを組織全体で共有した上で個々の人事施策に展開していくことが重要だと思います。

これからの学生を迎え入れるために

涌井:ここまで、企業として時代や人の価値観の変化に対してどう応じていくのかというお話をしてきました。一方で、就職活動に向かうこれからの学生に対しても我々にはできることがあるのでないかと考えています。インターンシップもその一つだと思いますし、大学生のうちから、社会人としてのキャリアイメージを醸成し、入社後のギャップやミスマッチを低減するための支援をしたいと思っています。

金丸:本当は高校生のうちからあるといいですよね。就職のために大学を選ぶわけではないですが、仕事というより何の分野について興味関心があるのかが意識できます。まずは社会を知るという軸と、自分の感覚値を試すという期間でもあると思います。
インターンシップでは、就業体験を通じて仕事への理解を深めるのはもちろんですが、何にワクワクしたとか、何にザラッとしたとか、こういうことに自分は過敏に反応するんだなということを丁寧に観ていくと、自分との対話になっていくのではないかと思います。(最近の学生は)「振り返る力が弱くなっている」というデータがありましたが、経験したことからどう感じたとか、何が心地よかったのかとか、自分の感情に紐づいていると後で想起しやすいんです。そういう感性でいると、ワクワクする企業のビジョンに出会った時にこれだと思えるのではないでしょうか。

涌井:そうですね。そういった意味では、企業として学生が理解しやすいビジョンを描き、発信し続けるということが大切になりますね。インターンシップでも様々な経験を培うだけでなく、体験から得られた喜びややりがいといった感情を丁寧に洗い出すワークなどを行うことで、企業とのマッチングイメージを想起しやすくなりますね。 今日は、時代の変革期という視点から、組織作りや人材採用のあり方を考えてきました。これからさらに、人であることの必然性を問われる社会となりますが、我々はお客様と共に企業の成長と発展を見据えた人事活動を支援させていただくパートナーでありたいと思っています。
本日はお忙しいところ、お時間を頂戴し、誠にありがとうございました。

金丸:こちらこそ、ありがとうございました。

まずはお気軽にお問い合わせください。

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