人事部の資料室

新卒・中途採用で利用したい「適性検査」 能力検査との違いは?

作成者: e-falcon|2022/12/04

新卒採用や中途採用にあたって、面接のほかに「適性検査」を導入する企業が増えています。

適性検査には様々な種類があります。そして就活生の間では「どの企業がどのような適性検査をしているか」ということも注目されており、就活にあたっての情報交換の対象にもなっています。

適性検査は能力検査とは異なる観点から人材を見るものです。

それぞれの違いを知り、採用に有効活用しましょう。

採用面接での戸惑い

筆者は会社員時代に、新卒採用の面接担当をしたことがあります。

一次面接では、一日に何十人もの学生に会って話を聞かなければならないため、1人8分という短い時間で相手を見るというタイトなものでした。

聞けるのは、いわゆる「ガクチカ」か志望動機、あるいは自社で何をしたいか、それはなぜか?といったところまでです。ひとつのことで話に花が咲けば、他の話題に移る余裕はほとんどありません。

それでも何らかの評価を下さなければなりませんし、一日のうちに何十人もに会っていると、正直「キャラクターの被った」学生が複数いるものです。
すると、ますます見分けがつかなくなってしまいます。

ただ、この一次面接で、次に進む学生の数がかなり絞り込まれることは事実です。自分が逸材を見逃していたらどうしよう、とヒヤヒヤしたものです。

特に、ごく短時間の面接では学生側もある程度の準備はしてくるものです。逆に言えば、取り繕ってその場を凌ぐこともできてしまうのです。これではなかなか相手の本質は見えません。

適性検査とは

ところで近年、エントリーの段階で能力検査や適性検査を実施する企業が増えています。両者の違いを軽く紹介すると以下のようになります。

まず、能力検査とは、基礎的な学力や社会常識などの「知識」を問うものです。言語の読解能力や計算力、英語力などが含まれます。

一方で適性検査は、能力検査とは大きく性格が異なります。
その人の性格や考え方、価値観などをはかるもので、いわば内面の部分に迫るものといえます。

就職情報サイト「doda」を運営するパーソルキャリアによると、中途採用では51%の転職希望者が筆記試験を経験しており、その内容の9割が性格検査や能力適性検査となっています*1。

面接だけでは見えてこない応募者の性格や考え方を知ることの重要性を、多くの企業が感じていると言えるでしょう。

価値観に関する検査の一例

では、「適性検査」では実際にどのようなチェック内容があるのでしょうか。

厚生労働省が簡易的な「価値観検査」を紹介しています。50の質問に答えるというものです(図1)。

(出所:「価値観検査」厚生労働省)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/ExplainMyself/Step2


ちなみに、筆者が試してみたところ、このような結果が出ました。

あなたの特徴

・ルールや規則に縛られず、自分のやり方や自分のペースで自由に仕事を進められることに強い喜びを感じます。自由度や裁量の幅の大きな仕事や、企業組織に属するのではなく自身で起業することに強いやりがいを感じます。

・心身ともに健康でいきいきと働ける整備された環境と体制で仕事ができることに強い喜びを感じます。長期的に安心して働くことができる組織に所属し、その組織に貢献するような仕事に強いやりがいを感じます。

・その人の将来を見据え、成長や変化に対応できる支援体制が整った環境で仕事ができることに強い喜びを感じます。育児・介護支援制度、キャリア教育支援、フレキシブルな人事評価制度などが整った組織に所属し、その組織に貢献するような仕事に強いやりがいを感じます。

・専門家として知識・技術を高め、特定の専門分野で能力を発揮することに強い喜びを感じます。 昇進して管理職になるよりも、特定の仕事について生産性を上げたり、自分の専門分野で他の人から頼られたり、新たなチャレンジをしたりして成長を実感できるような仕事に強いやりがいを感じます。

・仕事の時間とプライベートな時間のどちらに対しても、単にバランスを取るだけでなく、双方を充実させることに強い喜びを感じます。 自分が理想とする仕事とプライベートのバランスを実現できるような仕事に強いやりがいを感じます。

そして、このようなグラフが表示されました(図2)。

(出所:「価値観検査」厚生労働省)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/ExplainMyself/Step2 質問解答後


筆者としては、それなりに納得するところがあります。

ただ、これはあくまで簡易的なものです。
というのは、このテストは次の質問に進んだ後でも回答を修正できてしまう仕様になっていますし、「性格」や「行動パターン」といった面にまでは切り込んでいるとは言えないからです。

実際に民間事業者が提供している適性検査は、多くを考える余裕のない数の質問が準備されており、その人の直感的な回答が得られるため、より本人の本質を知ることができる仕組みになっています。また、質問も多角的な構成になっており、緻密な結果が得られるようになっています。

能力か適性か?

適性検査についてもうひとつ注目したいのは、すべての質問において「正解」「不正解」がないという点です。

強いて言えば、採用する企業側が良いと思うか、必要と思うかが基準になります。

また、筆者が面接担当をしたとき、「スポーツ部でキャプテンをやっていました」「留学の経験があります」という応募者は複数いました。「ありがちなパターン」と思うくらいです。

しかし、例えばスポーツ部のキャプテンとしてチームを全国大会や優勝に導いたといっても、さまざまなキャプテンがいるものです。
自らのプレイでキャプテンの座を任される選手もいれば、毎回スターティングメンバーではないものの、ベンチを盛り上げるムードメーカーとしてチームを率いるキャプテンもいます。

また、留学とひとくちにいっても、その動機も人によって違います。自分の勉強に集中することを優先した学生もいれば、海外の学生との交流を重視した学生もいることでしょう。
また、学ぶ、といっても、文献研究もあればフィールドワークもあります。

転職組にも同じことが言えます。同じ結果に至っても、同じ環境にいても、手法や学んだことは人それぞれ異なるのです。

多様性の時代にも必要な、人材の「見える化」

また、近年では外国人を受け入れる企業も増えています。
育った文化や言語が違うため、見た目や話し方、態度から見える印象だけでは真にその人の理解にはつながりにくい部分もあります。

しかし、言語の違いから自己表現は上手でなかったとしても、今の自社に馴染む人物か、必要な立ち居振る舞いをできる人物か、といった面が「適性検査」からは見えてきます。

また、志望者が面接を終えた時に「取り繕ってしまった」「自分のことを伝えきれなかった」と後悔しないためにも、適性検査によって相手の内面を知ることは重要なことです。

もちろん、今いる社員の適材適所の配置にも役立つでしょう。

人には「自分で気づいていない自分の特性」があります。
また、取り繕いを排除したその人材の「本質」を知らなければ、「面と向かって言っていたこととやっていることが違う」となりかねません。
そのような可能性を回避できるのがまた、適性検査の特徴でもあるのです。