弊社・株式会社イー・ファルコンのミッションは「ひとりひとりを自分の輝ける職場に導く」。適性検査を通じて個々人の可能性を広げ、キャリア形成に繋げていくとともに、適性検査で取得したデータを用いて企業や組織の課題解決に貢献させていただきたいと願っています。
本記事では、弊社が保有する2学年10万人以上の適性検査のデータを基に、どのような学生がどの時期に活動しているのかを明らかにし、24年卒採用に役立てていただける検討材料をご提供します。
※一部、表現を変更している場合がございます。あらかじめご了承下さい。
今回の分析に用いたのは適性検査「eF-1G」のデータで、対象は全国の22年卒・約7.5万人、23年卒・約7万人の計約14.5万人です。
適性検査「eF-1G」は、株式会社i-plugが提供しているOfferBoxにも標準搭載されている適性検査です。既に1,000社以上の企業が導入、毎年約10万人、累計400万人以上の方に受検していただきました。
以下の図1は「eF-1G」メインシートのイメージと特徴です。
「eF-1G」は人物のパーソナリティ・性格と、スキル・能力を多角的に測定できる適性検査のツールです。
特徴は図1に挙げた3つ。
1つ目は、測定領域の広さと診断精度の高さです。測定領域が広いため、活躍人材の要件を企業ごとに的確に捉えることができ、企業や組織の課題を個別にしっかり解決できるような網羅性を備えています。
2つ目は、測定領域の広さを活かした自由度の高いカスタマイズができること。
そして3つ目は、採用から配置登用まで幅広い人事領域を一気通貫して活用できることです。
今回は以下の3つの分析法を用いて考察しました(図2)。
次に、「時期別HML分析」は、受検者の特性をhigh(H)、middle(M)、low(L)に分類してみていく分析(HML分析)のことで、どの時期にどのような学生が活動しているかがわかります。
3つ目の「能力テスト詳細分析」では、時期別に能力差がどの程度あるのかを捉えることができます。
考察をする上で留意していただきたいのは、次の2点です。
例えば、受検データのピークがn月であった場合、実際にその学生にはそれ以前、n-1月時点でのコンタクトが必要です。
2点目は、3年生の秋頃までの受検数はまだ少ないため、そうした時期のデータは統計学上のサンプル数を考慮して参考情報としてご理解いただきたいということです(図3・右)。
それぞれの分析結果はどのようなものだったのでしょうか。
まず、「推移分析」から、学生の受検時期の変化をみていきます。
22年卒は、3年時に新型コロナウイルスが蔓延したため、不安感から多くの学生が早期に活動を始めました。
一方、23年卒は、オンラインインターンシップ、オンライン選考が一気に定着し、少し落ち着きがみられる状況でしたが、一方で、学生の動きはやや二極化するといった特徴情報も見受けられました。
ただ、22年卒と23年卒とで受検時期のデータを総合的に比較すると、全体としては特に変化がないように見えます(図4)。
図4を見ると、22年卒と23年卒は、どちらも3月にピークを迎えているように読み取れます。
では、果たして本当にそうなのでしょうか。その辺りをもう少し詳しくみていきたいと思います。
次は、時期別HML分析の結果です。
今回は、性格診断ではなく能力テストで取得できる能力総合点を用いて、能力総合点の高い学生群と低い学生群との比較を行いました。また、22年卒と23年卒を比較してどのような変化が生じているかを考察しました。
なお、能力総合点とは、受検者の「地頭」を判定するテストで、「基礎力」を土台として、その上に「数理力」「言語力」があり、さらにその上に「応用力」「創造力」があるという5つの要素で階層的に構成されています。
まず、22年卒の結果をみていきます(図5)。
図4でみたとおり全体のピークは3月でしたが、22年卒では能力総合点の高い学生のピークは2月で、全体の4割を超えています。
また、2月のピークを境に右肩下がりの傾向であることが見て取れます。こうした傾向の背景には、企業が優先して確保したい学生の本選考をこの時期に多くしていることが挙げられます。
参考期間ですが、2020年9月から2021年1月までの期間では、能力総合点の高い学生の構成比率は、企業の本選考が始まった3月以降よりも低いということがわかります。それは、コロナ禍の影響で、多くの学生が不安感から早期の段階で動き始めたことによって、母集団の数が増加し能力総合点の高い学生群の比率が見かけ上低下したのだと捉えられます。
次に23年卒をみていきましょう。
23年卒は22年卒とは明らかに異なる推移を見せています(図6)。
23年卒は5月までのデータで、6月以降のデータは今回対象外になっていますが、図6から、参考情報、参考期間を除くと、1月が能力総合点の高い学生のピークだったことが見て取れます。
つまり、22年卒よりピークが1か月前倒しになり、選考が早期化しているのです。
参考情報を含めてみると、9月がピークで、そこからずっと右肩下がりになっています。こうした9月から1月にかけての推移は22年卒とは大きく異なっています。
下の図7は、22年卒と23年卒の結果を重ねたものです。
図7の青い枠線で囲ってある部分に注目してみましょう。23年卒の能力総合点の高い学生の比率は、本選考期間で著しく低下していることがわかります。
採用が早期に決まり始めていることもその要因の1つだと推測できますが、次のデータを見ると、それだけではないことがわかります(図8)。
図8の青い枠線は、能力総合点の低い学生群の推移に着目したものです。参考期間ではありますが、23年卒の秋から冬にかけて、能力総合点の低い学生の比率が前年比で低下していることが見て取れます。
一方、本選考期間においては、前年比で増加しているということがわかります。
こうした動きが、能力総合点の高い学生の比率を上下させる、もう1つの要因だと捉えることができます。
以上のような変化は、現在進行中の24年卒の動向を考える上で、示唆的ではないでしょうか。
24年卒の夏インターンまでの学生の動きについては、おそらく変化を感じていらっしゃる方が多いのではないかと思います。
明らかに、動き出すのが遅い学生が増えている。あるいは、少し動くのですが、動きが継続しないなどの変化です。
上のようなデータをみれば、こうした変化のトレンドは、23年卒から始まっていたのではないかと推測できます。
22年卒よりも23年卒、さらには24年卒ではよりこのトレンドが強まって、その結果として、コロナ禍以前のような学生の二極化が進むのではないかと予想されます。
最初にご紹介した全体の受検の推移では、ピークに変化はないように見えましたが、「時期別HML分析」で詳しくみていくと、質的変化が生じていることが見えてきました。
本選考期間においては、能力総合点が高い学生の比率は下がってきています。
では、早期から採用活動を開始するしかないのでしょうか。
実はそうともいい切れないのです(図9)。
図9からわかるように、22年卒では後半戦でも、7月、あるいは11月に能力総合点の高い学生の山が見られました。その手前で、学生にしっかりアプローチできれば、後半でも能力総合点の高い学生の採用に繋げていくことが可能なのです。
こうしたアプローチは従来の手法では簡単ではありませんでしたが、オファー型サービス等を活用すれば十分可能です。
ここで別のグラフをみてみましょう(図10)。
このグラフをみると、能力総合点の高い学生は、通期にわたって一定の割合、活動していることが見て取れます。後半戦でも2割前後は活動しているのです。
活動している学生の絶対数は減少していきますが、後半であっても10名集めればその中の2名ぐらいは能力総合点の高い学生である可能性が高いということを、このデータは示しているといえるでしょう。
以上のように、前述の7月、11月の手前のタイミング、あるいは通期にわたって一定の学生にコンタクトし、適切な見極めができれば、早期での採用活動にこだわらなくても採用に繋げていくことができるのです。
したがって、早期をあえて回避し、本戦期間から土俵をずらすような戦略を描くことも可能です。
ここで気になるのは、能力総合点の高い学生の各時期の能力構成です。
前述のとおり、能力テストで測る能力は、5つの要素で構成されています。時期によってそれらに違いはないかどうか検証しておく必要性があるでしょう。
そこで5つの要素の時期別推移を表したのが下の図11です。
上の図から、特性には時期による差異はないことが検証できます。つまり、どの時期であっても、ターゲットへのアプローチと適切な見極めができれば、能力総合点の高い学生を常時採用できる可能性があるといえるのです。
ここまでは能力テストを基に見てきましたが、次に性格診断についてみていきたいと思います。
適性検査「eF-1G」は組織の中で好む役割に基づいて、役割思考を以下のような3群8タイプに分類しています。
CL1:組織の中でバランスを取って動けるタイプ
CL2:周囲との距離を保ちながら自らのやりがいを深めていくタイプ
CL3:周囲の流れにうまく乗りながら立ち振る舞うことができるタイプ
CL4:自分の考えを明確に持って、ありたい姿・あるべき姿を求め、群れずに突き進んでいくタイプ
CL5:他者との協調よりも自身の関心を深く掘り下げていくタイプ
CL6:周囲をリードし、ゴールを目指すタイプ
CL7:強い責任感でミッションを果たそうとするタイプ
CL8:自らの発言と初心を大事にしながら忠義を尽くし、周囲をサポートするタイプ
これらの8タイプを3グループにまとめて示したのが下の図12です。
図の左からみていきましょう。
まず、CL1からCL3の「最適化グループ」は「今の仕組みを着実に回す」タイプ。次に真ん中のCL4とCL5は「ゆらぎグループ」で、「今の現状を打破していく」タイプ。そして右のCL6とCL7、CL8は「発展化グループ」で、「こうすべきではないかと発展させていく」タイプです。
最近の課題感からすると、3つのグループの中で採用を強化したいのは、「ゆらぎグループ」だと考える企業が多いかもしれません。
では、この「ゆらぎグループ」の学生はどの時期に活動しているでしょうか。
下の図13は、役割思考8タイプの時期別構成比率の推移を表しています。
「ゆらぎグループ」に属すCL4は下から4つめの青、CL5はその上のラベンダーの部分で、実はすべての期間を通して3割前後で推移していることがわかります。意外にも、むしろ後半の方で割合が高いのです。
このように、このデータをみると有益な発見がありますし、それによって新たな選択肢を得ることが可能です。
例えば、「ゆらぎグループ」の人材は、やはり尖っている部分がありますので、どうしても定性的な選考では敬遠されがちです。そのため、せっかく母集団形成の段階で集められていても、選考過程で取りこぼしてしまうということがよく生じています。
こうした人材を確実に採用していくためには、このような客観的データを用いることが有益でしょう。
最後に、ここまで述べてきたことをまとめ、採用戦略をより競争優位性の高いものにするためのポイントをまとめてお伝えします。
全体の学生の受検時期(≒選考開始の時期)については、ピークを含め大きな変化は見られませんでしたが、能力総合点のHML分析からは以下のような質的な変化が確認できました。
本稿では、能力テスト、性格診断ともに、あくまで全体像の考察をしてきました。
しかし、個々の企業がよりユニークな、競争優位性の高い採用戦略を描くためには、それぞれの企業に適合するターゲット人材の要件や活動時期を分析することが必要になるでしょう。
その際、データさえ取得できれば、それほど難しい分析法を用いなくても見えてくるものがありますので、まずはデータを取得するところから始めていただくことをおすすめします。
また、24年卒は、入学とともにコロナ禍に入り、思うような学生生活が送れなかった学生も非常に多いため、学生生活について語れることが限られてしまっているかもしれません。
一方、コロナ禍においても、主体的に動ける学生は一定数いて、採用選考ではそうした学生に注目が集まり、そのような学生の獲得競争は間違いなく高まることが想定されます。
したがって、そのような人材を採用しようとするなら、1人ひとりの学生を他社よりもより深く理解した上で対応することが重要です。
また、現在は学生の多様性が非常に高まってきていますから、さまざまなタイプの学生のポテンシャルをしっかり見極めることが有益な採用に繋がるでしょう。
学生を理解し見極める際にはさまざまな施策が考えられますが、本稿でみてきたように、適性検査を活用して採用基準を的確に設定した上で取り組むことが非常に効果的です。