人事部の資料室

【セミナーレポート】いまさら聞けない!?適性検査活用のススメ

作成者: e-falcon|2023/10/01

「自社に合う人財を採用したい」「活躍ポテンシャルの高い人財を採用したい」「辞めない人財を採用したい」などの漠然とした期待を抱き、採用選考に適性検査を導入している企業は少なくありません。しかし、適性検査は自社に適した人財を見極める基準を明確に定めてこそ真価を発揮します。

そこで株式会社イー・ファルコン(以下、eF社)では、自社に適した人財を見極めるための適性検査の活用方法や、人財要件定義の方法を解説。また人財要件を定める上で押さえるべき留意点、成功させるためのポイントをお伝えするセミナーを開催しました。

【講師プロフィール】
大島 啓輔:eF社/営業企画部アカウントセールスセクション。2019年にキャリア入社でeF社に入社。営業として延べ100社以上のクライアントを担当し、適性検査ツールを用いた採用選考支援をはじめとした多くのプロジェクトを推進。販売代理店の教育・営業支援にも携わり、現在は直接取引の新規営業担当として、クライアントへの適性検査導入とデータ利活用の提案・支援を担う。

※一部、表現を変更している場合がございます。あらかじめご了承下さい。

はじめに

本日、講師を務めさせていただきますeF社・大島啓輔と申します。よろしくお願いいたします。

当社はピープルアナリティクスを用いて、企業の人財価値の最大化をご支援させていただいている会社です。23年にわたり、適性検査の開発および分析などを用いたコンサルテーションを提供してまいりました。本日は当社だからこそお伝えできる適性検査活用のポイントをご紹介させていただければと思います。

本日のセミナーテーマは、自社に適した人財を見極めるための一般的な適性検査の活用方法、人財要件定義の方法、そして人財要件を定める上で押さえるべき留意点・ポイントの3つです。

自社に適した採用すべき人財を的確に見極める手法をお持ち帰りいただくことを、本日のセミナーのゴールに設定させていただきたいと思います。

適性検査とは?

まず適性検査とは何か、またその導入メリットについて解説いたします。

適性検査とは、職務経歴書などでわかるような経験やスキル、面接で言葉にして発せられるような顕在化した意識とは異なり、目に見えにくい潜在的な意識や性格特性を可視化するアセスメントです。これらは行動や判断、意思決定の基盤となるものであり、人財の未来の行動を予測し、ポテンシャルを図る上で非常に重要です。
適性検査は一般的に、能力検査と性格検査に大別されます。性格と能力の両面から人物の特徴を可視化することで、採用の判断や育成、さらにはマネジメントに広くご活用いただけます。さらに集団のデータを分析することで、組織設計や人事戦略の立案に生かすことも可能です。

なお適性検査は数多くありますが、ツールによって測定できる領域や項目は全く異なっています。

測定できる項目としては例えば、パフォーマンスに直結するような能力の特性、仕事を継続する力、さらには人間関係を構築する上で重要な資質、コミュニケーション力などが挙げられます。どのような特性や能力が測定できるかは、ツールを選ぶ上でとても重要なポイントのひとつです。

では、適性検査を導入すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

適性検査を実施しない場合、個人の印象や好き嫌い、人間関係などに左右されてしまい、人物の評価が歪んでしまうことが往々にしてあります。個人の経験則や感覚に基づいて判断する、もしくは施策を実行してしまうため、選考の精度が低下し、結果の再現性も低くなります。

一方、適性検査を実施すると、データに基づいた客観的な理解・判断が可能になります。受検結果を分析した定量的なデータは、客観性のある対策に活用でき、採用精度の向上、活躍人財の見極め、さらには退職の防止などに役立てることができます。

ここからシーン別に詳細にメリットを解説いたします。

まず適性検査の利用シーンとしては最も多いのが「採用選考」です。適性検査を活用することで、従来、曖昧かつ暗黙知化していた合否判断軸を具体化・共有し、かつどの程度要件を満たしているのかを数値で確認できるようになります。言い換えれば、誰が見ても同じ視点、同じ基準で判断することが可能になります。

また採用要件は会社の戦略によってさまざまな観点が含まれているので、多様なフィルターで候補者を理解して見極める必要があります。例えば、社会人としての最低ラインをクリアしているか、自社の社風に合うか、成長ポテンシャルがあるか否かなどの観点です。それらすべてを限られた面接時間内に見極めることは難しいため、適性検査に一部選考を委ねる、あるいは補強に活用することで、採用活動の効率化と精度向上も見込めます。

次に「退職防止」に関する活用です。近年、クライアントの皆様から退職防止に関するご相談をいただくケースが増えています。適性検査を取り入れ、社員のデータを取得・蓄積し、実際に退職した社員と勤続社員のデータを分析することで、自社環境における退職リスクや退職原因を予測することも可能になります。

退職の原因が予測できるようになれば、優先的にサポートを行うべき人財の特定、あるいはどのようなサポートや指導が必要になるかも明らかになります。結果、闇雲に対策を打つのではなく、根拠を持った対策を講じることができるようになり、退職防止の成功率を高めることにつながります。

適性検査は組織設計やマネジメントにもメリットを発揮します。社員データを取得・蓄積すると、会社全体や組織別の人財構成を可視化して、育成課題の特定や組織の設計を行うことができます。また自社における活躍要件を定義できるので、要件に沿った育成施策、採用候補者・社内にいるポテンシャル人財の発掘が可能になります。

いずれのシーンにおいても重要なポイントは、データに基づいた客観的な判断や施策の立案ができるようになること、また判断や施策の再現性を高められる点です。なお紹介した以外のあらゆるシーンで適性検査のデータは活用できるものであり、企業の皆様の多岐にわたる人事活動に役立てることができます。

続いて、適性検査を最大限活用するために欠かせないポイントについてご紹介いたします。

まず重要なのは「適切な人財要件があること」です。何を測定・確認したいのか定まっていないと、ツールに踊らされかねません。「自社にとって優秀か」「自社に必要な人財か」などの要件が重要であり、その点を見落とすと判断を誤ったり、せっかく採用した人財が活躍せずに退職してしまったりというようなことが起きてしまいます。

しかし、「そもそも活躍する人財の見極めが難しい」「自社における活躍人財が定義されていない」「活躍人財をどのように定義したらよいかがわからない」というような課題を抱えてらっしゃる企業は多く、自社で活躍する人財が定義されていない、もしくは感覚で定めているのが実態かと思います。そうした状態で適性検査の導入・分析を行っても実効性のある施策の展開は難しいため、まず人財要件定義を行うことが非常に重要です。

2つめは「適切な指標が用いられていること」です。適性検査には、似て非なる項目が多数存在しています。そのため、定義した人財要件を正確に確認できる適性検査と指標を選定することが必要です。その際、人財要件を要素分解して、できるだけ具体化していくことがポイントです。例えば「コミュニケーション力の高い人財」といった定義で終わるのではなく、「相手の要望を具体的に引き出すことができ、的確な応対ができる人財」と具体化していく ことで、どの指標が適切か見極めていくことができるようになります。

また採用の合否判断で用いる場合には、自社の及第点の水準や判断基準をあらかじめ定めておくことも必要となります。人財要件を適性検査の指標と紐づけることで、面接官の視点の統一や採用効率の向上につながります。

3つめは「継続して実施・分析すること」です。データを蓄積し、適性検査以外の人事情報・データと掛け合わせて分析を行うことで、自社の実態の把握、施策の効果検証、より良い状態に向かうための指標のブラッシュアップが可能になります。また継続して適性検査を実施することで蓄積できるデータ量も増えるので、分析の精度もより向上していきます。ただデータ蓄積には時間がかかります。将来的に有効な分析を行うためにも、導入時点で自社に適合した質の高いツールを選定することがポイントとなります。

適性検査導入の流れと人財要件定義のポイント

ここから適性検査の導入や見直しに向けたプロセス、またその際にカギとなる人財要件定義のポイントを解説します。

適性検査は一般的に、ツールの選定後、まずはデータを収集し、必要に応じて分析を行いながら、自社の人財要件を定めます。次に要件を見極めるための基準を設定、あるいはプログラムを開発し、実際の運用がスタートします。これらのプロセスを全て実行する場合には、平均して2カ月ほどの時間がかかります。仮にデータの収集や分析プロセスを割愛する場合は、最短3週間ほどで導入することも可能です。

導入時に必要な人財要件定義の重要ポイントについて、5つにまとめました。

まずは「自社の社員データを取得し実態の把握を行うこと」です。すでに人財要件定義の重要性はお伝えしましたが、自社の社員データがあれば、定量的な根拠を持って人財要件を定めることができます。例えば「どういう特徴を持つ人財が活躍しているのか」「どういう特徴を持つ人財が退職しやすいのか」「部門別の活躍人財の特徴に違いがあるのか」などが、分析結果から把握できるようになります。さらに分析結果は採用、退職防止、組織設計、人員配置などに幅広く活用できるので、実態を把握するためにまず自社の社員データを取得しましょう。

次に実際に採用場面や施策の実行時に運用する指標を定めるにあたって、「欲しい人物像の具体的な定義」と、その「定義をどの程度正確に測定できる適性検査を採用しているか」という2点がポイントとなります。

人物像を具体的に定義するためには、人財要件の要素分解、人財特性の明文化、階層別の構造化、測定項目と水準の設定という流れが必要になります。人財要件の定義後、既存の社員データを用いるか、もしくは対象層に対して新たに適性検査を実施し、定めた要件が正しいのかという検証とチューニングを行っていくことが重要です。それらのプロセスを経て活用判断を行い、採用や育成現場で運用・連携することになります。

3つめは「人財要件を定めるにあたっての考え方」です。当社では、今必要な人財、今ある人財をリードする人財など「現在を支える人財要件」と、これから「未来を創る人財要件」の両面から考えていくことが重要だと考えます。この観点が抜けてしまうと人財に対する期待値にズレが生じますので、より具体的に考えていくべきでしょう。

現在を支える人財の要件については、既存社員のデータから定量的に定めていく方法がおすすめです。一方、未来を創る人財の要件は、現在活躍している社員と異なる可能性がありますので、協議ベースで定性的に定める必要があります。

4つめは「人財要件の充足度」、すなわち求める人財とどの程度フィットするかの度合いを確認するための基準を定めることです。

要件と指標が定まったら、既存社員のデータ、あるいは採用母集団のデータなどを用いて、出現率や対象層を確認しながら自社の基準値を定めていきましょう。例えば、人財要件のフィット度が高い順にランク付けし、それをベースに合否の判断基準を定めていくことも可能となります。

5つめは発展的な内容になりますが、人財要件定義や指標・基準の策定後に、対象層別にアプローチを設計することが重要となります。

対象層別のレベルに合わせて研修などの育成モデルを設計することで、人財要件を最大限に生かしつつ、戦略的な採用から育成、登用まで一気通貫した施策を実行できるようになります。

人財要件定義の具体例

ここで解説に対するイメージをより具体的に持っていただくため、当社・適性検査「eF-1G」のデータを用いて人財要件を定めた事例を2つご紹介します。

1つめは24新卒採用の就職活動生の傾向をまとめた事例です。当社では24卒の学生約3万人のデータから人物像をプロファイリングしました。

24卒学生には共通して「感情を抑え込む傾向」「協調性」「自分の意見が言えない傾向」などの性格特性項目が高く出ました。それらの特性をもとにプロファイリングすると、「周囲の空気を読み、歩調を合わせながら進む」などの特徴が浮き上がってきました。

一方、「指示管理を好まない傾向」「他者を攻撃してしまう傾向」「自分が優れていると思い込んでしまう傾向」などの性格特性項目は低く出ています。ここからは、「無理をせず控えめで、与えられた役割を淡々とこなす」といった特徴が読み取れます。

24卒学生の傾向を総合すると「周りの動向を察し、連携しながら進めていける」といった強みがある一方で、「熱意や主体性が低い」という傾向があることが分かってきました。このように集団に共通する傾向から、人物像や強み/弱みを言語化することが可能になります。

2つめの事例は、ある企業の既存社員の皆様の人財要件定義を行った事例です。eF-1Gには各企業が自社内で分析できる機能やレポート出力機能が備わっています。事例となる企業のケースでは、特定の社員の方々に適性検査eF-1Gを受検いただき、その共通項をレポートで確認しました。

その結果を読み解くと、同社の人財要件は「分け隔てなく親身になって人と関われる」「他者を尊重し協業して物事を進める」「自分事と捉え受け止めることができる」「他者の指摘や評価を素直に受け止めることができる」となりました。

以上の事例のように、適性検査を受検しデータを分析することで、活躍する人財など自社内の特定の集団、採用の母集団などの共通項を可視化することができます。そして自社独自の人財要件を定めて言語化することで、採用の指標に取り入れることが可能です。

他の事例では、さらに人財要件の充足度を点数化しランクを付けることで、選考初期のスクリーニングに活用いただいているケースもあります。まだ人財要件が定まっていない、あるいは見直しを検討されている企業の皆様におかれましては、ぜひ適性検査を用いたアプローチを検討していただければ幸いです。本日は長い時間ご清聴いただき誠にありがとうございました。