【セミナーレポート】5万件超のデータを分析!24卒学生の特徴と対策
イベント概要
2023年6月13日に開催されたオンラインセミナー「5万件超のデータを分析!今こそ知りたい、「24卒学生」の特徴と対策」では、24卒採用を成功させたい全ての企業様に向けて、現在まさに活動している「24卒学生」の、他では得られない具体詳細な特徴と、それに対するアプローチ方法を、独自の視点で解説しました。
本記事ではその内容の一部をレポートします。
イベント当日のアーカイブ動画の準備もございますので、下記よりぜひご視聴ください。
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登壇者
株式会社イー・ファルコン 営業企画部 部長
株式会社イー・ファルコン(以下、eF社)では、学生のパーソナリティデータを毎年分析し、各年度の採用学生の特徴や傾向をまとめたレポートを各企業に提供しています。2022年にホワイトペーパーとして提供した分析結果は、各社から大きな反響をいただきました。
そこで2023年は、分析データをより詳細にお伝えするためのセミナーを実施。当社が提供する適性検査「eF-1G」の受検者約3万3000人を含む、5万件超のデータの分析から見えてきた「24卒生の特徴と対策」について解説しました。
【講師プロフィール】
本田 宗寛:eF社/営業企画部部長。事業会社における人事経験を通じて、採用、評価、報酬、労務管理、教育育成など、人事の主要テーマに関して企画・設計~運用までの実務経験が豊富。
その他、資本業務提携のPMとして、半年で人員規模50人、売上規模400億の商流構築、エリア展開の主導役として3拠点同時立上・年商40億円規模の組織立上、新規上場における体制構築及び仕組みの整備などのマネジメントおよび役員経験。
法人向け研修講師、国内上場系大手企業、外資系専門商社、外資系医療機器メーカー等に対するトレーナー経験多数。
※一部、表現を変更している場合がございます。あらかじめご了承下さい。
はじめに
本田:
プレゼンテーターを務めさせていただきますeF社・本田宗寛です。本日のセミナーは「5万件超のデータを分析!24卒学生の特徴と対策」と題し、今期新卒採用における学生の全体傾向を解説させていただきます。
イントロダクション~eF社の本選考24卒学生分析の特徴~
本田:
当社では統計学を駆使した手法による解析で、数学的に信頼性が高い高精度のレポートを作成しております。また心理学の知見をベースにした適性検査で、「人の何たるか」を解析・可視化するアプローチを採用しています。本セミナーでは、学生の行動結果ではなく、行動を取った背景、すなわち意思決定上の価値判断基準の構造を分析・解説いたします。
当社では各社との取り組みのなかでデータを蓄積・活用し、心理学の学者などのエキスパート、データサイエンティストとのディスカッションを交えて、本来見るべき学生の姿を正しく捉え、最終的なレポートとして提供させていただいています。
一方、当社レポートは、複雑な心理学や統計学の知見を、人事や採用の実務に生かせるよう、平易なアウトプットでお伝えしているのも強みです。
今回の「24卒学生分析の特徴まとめ」では、当社の適性検査「eF-1G」を受検した3万3000人強の分析サンプルを分析しました。
今期の24卒学生を分析する上で、23卒学生との比較軸も持ち込みました。
今回はまず24卒学生のみを分析し、項目ごとの特徴、相互の関係性について確認した後、23卒学生を同様に分析した上で比較し差異についても明らかにしていきます。
24卒学生の特性分析概要
本田:
まず24卒学生の全体傾向を俯瞰いたします。以下の資料は、当社が提供する「eF-1G」の主要な測定項目の素点の平均点をまとめたものです。
測定項目の素点平均の最高は90点を超え、最低は40点を切っています。上下で一定の差があるデータに見えますし、左側下位の13項目を除くと項目間の差はあまりない平坦な形にも見えます。
もしくは、下位13項目になるとぐっと素点が下がっていくような、項目間の差が顕著な結果にも見えます。
これを偏差値にしてまとめなおしたスライドが以下となりますが、全く違う見方が可能となります。
左側の縦軸は素点の平均点(オレンジ線)、右側の縦軸はそれを偏差値化(青線)したものです。
各項目をプロット(描画)してグラフを重ね合わせた図表を作成しました。
統計上、ある項目群の数値を「高い」「低い」と論じる際、2つの視点があります。
ひとつは素点の分析です。
企業によっては、素点が高いため「もしかしたら優秀な学生かも」と判断したり、もしくは低いため「採用は要注意」と警戒したりするケースがあるでしょう。
しかし、素点による分析には落とし穴があります。各項目に仮に異常に高い、もしくは低い数値がある場合、平均が大きく影響を受けます。そのため、素点分析では、各項目群全体における各素点の相対的な高さは十分に認識できません。
相対的に他項目と比較するためには、偏差値を活用した分析方法が有効です。
次の図では、偏差値のばらつきを低で並び替え、下方に各検査項目を表記しています。
偏差値は平均となる50点を基準に、どの程度、高いか低いか、振れ幅の大きさを見る指標です。図のグラフでは、24卒生の各検査項目は±3前後の範囲内に収まっております。一見、さほど項目間に差がない特徴のないデータにも見えますが、ここからさらにブレイクダウンして偏差値分析を詳細に見ていきます。
全体的に大きな違いはないものの、項目間では隣接する項目との間に明らかに下がっているケースが見受けられます。最も目に付くのは赤枠で囲われた2つの箇所。トップ3とボトム3の項目には、周囲に比べて顕著な差異があります。それ以外にも、矢印で示した各項目で隣接する項目との間にギャップが見られます。
このようにこのデータを見ると、スコア的には近似していても、内容においては機微な特徴があることが読み取れます。
以下の図はその機微の部分の詳細です。
統計的な手法で全体像を掴みたいため、「相対的に高い特徴とみなせる項目」(上位)と、「相対的に特徴があると見なせない項目」(中位)、「相対的に低い特徴と見なせる項目」(下位)に分割して、領域ごとに分析を深めました。中位についてはさほどギャップがないので、今回は分析の対象から除外します。
まず偏差値50に対して±3ポイントと振れ幅は非常に小さく、各パーソナリティの評価項目において極端な違いがない可能性が示唆されています。
とはいえ、内容においては機微な特徴、ふくらみ (凸部分)と、へこみ(凹部分)が見えます。
24卒学生の個人間の違いを注意深く見極めることが、肝要であることがデータから示されています。
24卒学生特性の項目別詳細分析
本田:
次にトップとボトム部分を切り出して改めて表示したのが以下の図です。
当社では、相対的に高い特徴と見なせる項目に含まれる項目のうち、「自分の意見が言えない傾向」の高さを最初に着目しました。
また「素直さ」以下の項目についても同様に見ようと考えていますが、なぜ相対的に低いこれら項目を持ち出すかについては、心理学に基づく知見が必要です。
アナリストによれば、相対的に高い特徴である「自分の意見が言えない傾向」は、「慎重になり過ぎる」という特性に下支えされている可能性があり、パーソナリティ特性として両項目は構造的に強固であると示唆されました。
私は、これらふたつの項目は非常に似た表現であり、双方とも上位の項目として表れていることから、「慎重になり過ぎる傾向」が「自分の意見が言えない傾向」に拍車を掛けているのではないか、もしくは「相手の意図背景を理解する力」「自分を責めてしまう傾向」が比較的強く、「慎重になり過ぎる傾向」をより顕著なものにしていると理解しています。
また別の観点の特徴としては、「人と深い関係を築く力」が比較的上位にあります。
本来的に、「慎重になり過ぎる傾向」が高い場合、「人と深い関係を築く力」は低めに出ますが、上位に並んでいる点は大きな特徴です。一見矛盾するような項目が上位に表出する理由を読み解くことが、同世代を捉える上で重要になってくるでしょう。
なおトップ項目と反対側にある「社会的開放性」には、構造的な脆弱性があると分析しています。「自分の意見が言えない傾向」と「社会的開放性」は本来逆の概念だと捉われがちですが、双方が上位に来ており、かつ前者が後者より高い位置にあることで、複雑な心理構造があることが伺えます。
従来の分析だと、「寛容性」や「誠実性」など緑枠の項目を含めて、「社会的開放性」が比較的強めに出る、すなわちオープンなタイプの人達が多くいる世代という特徴に見えるはずですが、「自分の意見が言えない傾向」が上位にくることから「自分を抑えながら周囲を受け入れる」という複雑な特性的構造がある世代という示唆がうかがえるのです。
次に24卒生のパーソナリティ特性の構造としてユニークな点として、「素直さ」が上位に来ている点が挙げられます。
「素直さ」は「自分を責めてしまう傾向」「自己客観性」と関係が深く、結果、ひがんだところがなく「人に逆らわない素直さ」であることが示唆されます。また受動的な素直さ、受けに回るタイプ故に、規律・管理・不確実なことへの順応性が高いとも読み取れます。
これまでの解説から、24卒生は複雑な人物特性イメージという印象を持たれるかもしれませんが、今回は際立った特徴として「自分の意見が言えない傾向」とまとめさせていただきます。「自分の意見が言えない傾向」がまず第1の特徴としてあり、背景には「慎重になりすぎる」という特性があります。
ではなぜ慎重になりすぎるのかと言うと、「相手の意図・背景を理解する力」「人と深い関係を築く力」「自分を責めてしまう傾向」などが比較的高いからです。
「社会的開放性」の構造的な脆弱性も、結果として「自分の意見が言えない傾向」を裏付けており、まとめると「洞察力に優れた人の良い引っ込み思案」という特徴が現れると思います。
次に低い項目もピックアップしていきましょう。相対的に低い特徴を構成する項目は「他者のせいにしてしまう傾向」と「外向性」です。この位置付けは構造的にも整合性があります。
「執着して離れられない傾向」の低さも24卒生の特徴でしょう。何かにこだわり続けることがあまりなく、素直で柔軟という傾向が見られます。
そして「内向性」の低さも24卒生の特徴です。全体的に「熱量」が低く、飄々とした淡白なパーソナリティを持つ可能性が高いと読み取れます。
ここまでの分析結果をまとめると、洞察力に優れた、人の好い引っ込み思案のパーソナリティを持つ一方、熱量が低く、飄々とした淡白なパーソナリティがあり、併せると「傾聴力に優れた傍観者的な特徴」と表現できるでしょう。
24vs23卒学生の特性比較分析
本田:
次に23卒生と比較から、24卒生の特徴の輪郭をさらに明確にしていきたいと思います。
24卒生は23卒生に比べ、実質的に慎重志向が高まっている傾向があります。ストレス耐性の弱さ、安定性の低さ、不安があるので、開放性にはネガティブ。結果として慎重志向で、安定性も下がってきている形です。
比較した際、去年の新卒に比べて更に慎重な態度を取る学生が多い傾向が読み取れます。
一方で24卒生は23卒生に比べ、心情的に挑戦志向が高まっている傾向があります。複雑ではありますが、慎重だがチャレンジしたい要因が見て取れるということです。「外向性」や「自分を奮い立たせる力」などが、昨年と比較するとやや高めの傾向にあります。
言い換えれば、将来的展望ややりがいなど、挑戦志向に働きかけるアプローチや、実感的・知覚的な展望を提示することで、昨年よりは“慎重の鎧”を取り除きやすい学生たちである可能性があります。
24卒学生特徴のふりかえり
本田:
最後に24卒生の特徴をまとめていきたいと思います。
24卒生の際立った特徴は、「洞察力に優れた人の好い引っ込み思案」と「熱量が低く飄々とした淡白なパーソナリティ」の両面を併せ持つ点です。両者とも人の話をよく聞き、周囲と歩調を合わせ、中立を歩む身軽で世慣れた雰囲気を持つパーソナリティです。
総合すると「傾聴力に優れた傍観者」の傾向が強いと言えるでしょう。
一方、23卒生に比べると、挑戦志向が強まっている傾向も見られます。
彼らの傾聴力を生かしながら、夢やビジョンに働きかけるアプローチで、アグレッシブな人財として導ける可能性があります。いわば、「高いパーソナリティのベースを持て余している」、もしくは「自分の本気を出せる場や機会を待っている」と分析をまとめることができるでしょう。
ここまで心理学と統計学のアプローチで今期の新卒学生像をお伝えしましたが、ここからは各社の実務に生かしていく方法についてもいくつか例示したいと思います。
足元の景況感や人材不足感から売り手市場の圧力が高まっているなどの環境変化も踏まえると、24卒生採用のアプローチや内定者フォローはいくつかの点に留意すべきです。
1点目は外発的な動機づけ。学生自身の意思決定の正しさを、客観的に示し続けることが非常に重要となるでしょう。
新卒採用マーケットは激化しており、今年の学生は選択肢が非常に豊富にある状態です。例年に比べて内定辞退などが増加する可能性も大いにありえるため、特徴に合った働きかけや提示がより重要になってきます。
2点目は、自社の競争優位をしっかり提示することです。
24卒生もまたしっかり情報収集を行っていますので、情熱や熱意のみならず客観的なデータで自社の優位性を提示することが必要です。仕事のやりがいや得られる経験・スキルの具体像を、継続的に伝えていくことが肝要となるでしょう。
3点目は、1点目、2点目を裏付ける異動・登用を含めた仕組みなど人事諸制度の提示です。ここには先輩・OBも含めた、自分自身を投影できる具体像の提示が有効になります。
一方で、内発的な動機への働きかけもポイントとなるでしょう。“脱傍観者”への工夫も考慮してみてはいかがでしょうか。仕事の体感ないし、疑似体験の企画・実行、もしくは自分の内面と志望動機、現時点でのビジョンなどの棚卸し、仕事・事業・職場とのつなぎこみなどが有効でしょう。
今後、入社に向かってさまざまなフォローアップを実施されると思われますが、24卒生の人物像をしっかりイメージするシーンで本分析を生かしてください。
なお現時点で、今期の採用の振り返りをプランニングされている担当者様も多いと思います。
一般の採用媒体メディアが提示する振り返りと、異なるアプローチを当社は採用しています。
具体的にはどのタイミングで内定を受けるか、何社ほど内定をもらうかなどの、全体的な市場観や就職活動動向をベースとした振り返りではなく、人の内面を掘り下げるアプローチです。
新卒採用活動の振り返りプロセスや、来期の予算取りに向けた企画のコミュニケーションプロセスにおいては、必ず決裁者の主観的な観点やコメントが出てくるかと思いますが、当社の振り返りはより客観的な形で答えを提示できる特徴があります。
全体的な学生の内面の変化傾向を捉えることで、そこからコミュニケーションと配属を繋ぎ合わせる素材になるはずです。
なお今回は、弊社の新卒受検者のデータベースに基づく分析結果をお伝えしました。こちらは一般的な傾向と捉えてください。
一方で、一定量の受検者、内定者に関する継続的なデータの蓄積がある企業においては、そちらをベースにした独自の分析も可能です。
従来のデータ分析では、単純集計やクロス集計レベルでしか浮かび上がってこなかったものが、心理学に基づく網羅的な適性検査のデータ蓄積と ピープルアナリティクスの活用によって、より生々しい人物像に接近できます。
さらにその特性分析に基づいて内定者個々の特性を可視化することで、効果的な採用戦略などにも繋げていけるフレームを構築できます。
現在、当社では「内定辞退防止ソリューション」というパッケージも作成中です。
近日中にリリースしますが、その手法も含めることで、より個別に有効なコミュニケーションや、入社後の最適配置につなげることが可能となるでしょう。
当社分析による24卒学生の傾向解説については以上となります。本日はありがとうございました。
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