'24卒の学生の就職活動がいよいよ本格化します。'24卒の学生は学生時代を通じて、新型コロナの影響下で過ごしており、価値観や人間関係もこれまでと異なっています。本セミナーでは、企業が'24卒の学生にどう対応すべきかを探ります。
第1部ではキーノートセッションとして、採用コンサルタント/アナリストの谷出正直氏に「'24卒の学生の質的変化」について伺います。第2部では谷出氏に加え、Thinkings株式会社の代表取締役社長・吉田崇氏、株式会社i-plugの小野悠氏とともに、質的変化にどう対処すべきか、また早期接触から本選考へつなげる学生との向き合い方について議論しました。
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
※以下、ご発言頂いている方々の敬称は略させていただきます 。
※一部、表現を変更している場合がございます。あらかじめご了承下さい。
【講師プロフィール】
谷出 正直(たにで・まさなお) :奈良県出身。筑波大学大学院体育研究科を修了。 新卒でエン・ジャパンに入社。新卒採用支援事業に約11年間携わる。現在、採用コンサルタント/アナリストとしてコンサルティングや研修やセミナーの講師、授業、コラム連載、現場情報の発信などを行う。働く目的は「イキイキと働く人が増える社会」をつくること。筑波大学同窓会「一般社団法人 茗渓会」理事。
谷出:
'24卒の学生の行動や価値観の変化について、まず新型コロナウイルスの影響をグラフで見ていきましょう。紺色が高校生、濃い青が大学生、水色が社会人を表しています。横軸が時系列であり、ひとつが3カ月ごとに区切られており2019年の1月から並んでいます。縦軸が'19卒、'20卒、'21卒というかたちで就活生の動きを表しています。
日本におけるコロナ禍をわかりやすく2020年4月からだとすると、ピンク色で囲んでいる期間がコロナ禍となります。大学への入学直前にコロナ禍になったのが現在の大学3年生、すなわち'24卒となります。
'24卒は次の就活生にあたりますが、最も変化が大きい世代です。高校の卒業式、大学の入学式や新歓も中止や縮小となり、気持ちの区切りがつかないまま大学生活が始まります。そして5月のゴールデンウィーク明けから急遽オンライン対応も迫られました。
大学の先生方も状況変化にどう対応してよいか分からない状況でバタバタでした。試験もオンラインだと難しいということで、毎回の授業ごとに大量のレポートが出される。'24卒はそんな環境で大学1年生を過ごしてきた世代です。そのため新しい人間関係を構築できなかったり、学生らしい生活・経験が積めなかったのが特徴です。実際、各社の調査をみても'24卒は「友達ができない」「学生時代の満足度が低い」といったデータがあります。
2年生になっても対面授業が増えず、オンラインに慣れるというよりそれしか知らない状態に置かれました。そうなるとオンラインの使い方もかなり変わってきます。皆さんもオンラインで参加するセミナーや研修時に感じていると思われますが、別の作業をしながら、オンラインに参加する“ながら利用”をするようになったのがここ最近の特徴です。企業からは「説明会には参加してくれるが歩留まりが良くない」「会社理解が進まない」という悩みを聞く機会が増えました。
さらに「学生生活を通じた成長を実感できない学生が増えている」「社会人と直接やりとりする機会が少ない、慣れていない」「ネットでの情報収集が多くなりがちで、正解を求めたり、頭でっかちになりがち」というネガティブな部分もあります。一方で、行動する学生は一定数いるため、学生生活の二極化の拡大が起きています。そんな大学生活を歩んできた'24卒がついに就活するタイミングが今年です。
'23卒の学生は1年間だけリアルでのキャンパスライフを体験しており、大学の友達や先輩もいます。一方、オンライン化に対応した世代である現2年生('25卒)、1年生('26卒)は、大学側がさまざまな施策を打つようになったため、キャンパスライフを満喫できるぐらい盛り返しています。'24卒は“コロナネイティブ”で最も激しい変化を経験した世代ということになります。
「就活を通じて学生は成長する」という話はよく聞くと思います。実際、就活を始めた3年生の初期よりも、内定をもらって就職先を決めた4年生のほうが大人になっていると言われることが多いです。通常、学生生活+就活で成長するはずが、'24卒は最初の成長機会を奪われています。それを「伸びしろがある」とするのか、「そこまで至っていないからダメだ」とするのか、企業によって判断が分かれるところです。
近年の就活生のなかでは、男子学生の育休取得希望者や、ワーク・ライフ・バランスに紐づく内容や女性の社会進出などに対する希望も増えてきています。
いわゆる“配属ガチャ”という言葉も広まり、配属先の勤務地や職種を自分で選びたいという学生が半数を超えているとされています。就職後の仕事内容について「やりたいことをやりたい」というのは今の若者の特徴です。働きやすい環境を求めており「安心して働きたい」「ワーク・ライフ・バランスを重視したい」「コスパ・タイパが大事」などがキャリアの主な捉え方です。
「自分のやりたいことをやりたい」というのは近年の学生ならば当然そうなのですが、一方で'24卒の学生たちは学校生活のなかで社会人から仕事について聞く機会をなかなか持てなかったと考えられます。社会人から見れば、「それは決して誰でも成り立つことではない」という感覚があり大きなズレが生じています。その点をうまく解決することが、'24卒の採用成功の鍵になると考えています。
田中:
「誰かの役に立つ」という観点を解決してあげることが、企業にとって良い採用につながるかもしれません。また学生にとっては、社会に出るにあたって準備が整い、その後の活躍にもつながりそうですね。
谷出:
はい。仕事のほとんどは、ただ「やりたい」というだけでは、任されることは少ないです。抜擢人事など、無いわけではないですが、自分の能力を高める中で、相手の役に立つことを増やしていく。就活時の選考フローなどのなかで、そのすり合わせを考える機会を組み込んでいかないと早期離職などにつながってしまう懸念があります。
田中:
社会としてもその部分の関わり方が重要になってきそうですね。
田中:
本日のテーマは「早期接触から本選考へつなげる学生との向き合い方」です。谷出さんに挙げていただいたような学生の質的変化に対して、企業としてどう対応していくべきかパネリストの方々と考えていきたいと思います。パネリストをご紹介いたします。一人目は、Thinkings株式会社の代表取締役社長・吉田崇さんです。
吉田:
弊社では採用管理システム「sonar ATS」を提供しております。企業側の取り組みや変化する応募者に対してどのような手を打てば効果的なのか、事例も交えながらディスカッションできたらと思います。
田中:
もうお一方は株式会社i-plug・CS1部の小野悠さんです。
小野:
私は普段からお客様と接しながら採用の悩みを直に聞いている立場、加えて学生面談やキャリア相談を日々行っている立場の双方の観点からお話させていただきます。
田中:
モデレーターは私、株式会社イー・ファルコンの田中が務めさせていただきます。本日の最初のディスカッション・イシューは、「各社が考える'24卒の質的変化とは?」です。先程、谷出さんからも学生の質的変化についてお話しいただきました。吉田さんはどのような変化を感じていらっしゃいますか。
吉田:
弊社も自社採用を行っており、'24卒の学生とはすでに接触を開始しています。ある交流会の参加者のなかに筑波大学、早稲田大学の学生さんがいらっしゃいました。同じテーブルだったので話を交わすと、その二人はとても仲が良い。今日知り合って仲良くなったのか尋ねると、高校時代の友達ということでした。片方がもう一人の友達を誘ってイベントに参加したそうですが、その様子がとても象徴的だと私は思いました。
つまり大学に入学してずっとコロナ禍だったので、バイトやサークルに参加できず、大学に入ってからの人間関係ではなく、高校時代の延長でイベントに来ていたのです。見ている業界や志望職種を広げ切れていない印象も受けました。そのため、'24卒に対しては視野を広げて何かを捉えられる、また相談できるスタンスの企業が喜ばれるだろうと感じました。
また弊社のお客さまの事例となりますが、ある会社では根気度を測るために最初の書類選考を紙で実施していますが、近年では提出率が下がっています。これまでの採用で上手くいっていたからといって、同じ施策をただ繰り返すだけでは企業は苦戦することになるでしょう。当社でもどう採用を変えていくかという視点が大事になると思っています。
田中:
谷出さんからは「新しい人間関係をつくれていない」「普通が通じない」という指摘がありましたが、質的変化についてはどう捉えてらっしゃいますか。
谷出:
今の3年生からは、「普通は今ぐらいから就職活動をするよね」という話に対して、「え、それ普通なんですか?」という返事が返ってくることが往々にしてあります。'24卒は就職活動やインターンに関する話題も多くありません。そのため、インターンへ行っている学生たちが、自分でなかなか評価しきれないという話はよく聞きます。
コロナになった1年目については、高校時代の友達と高校時代の遊び方のままで交流する、“高校4年生”になってしまったという話もよく耳にします。大学生らしいことをできていなかったことが、その後の就職活動に影響していると感じます。
田中:
さきほど吉田さんが出会われた学生は、高校時代の友達とのつながりがあって情報交換しているというお話でした。情報の収集源は'23卒以前と'24卒だとだいぶ変わってきているのでしょうか。
谷出:
現在の情報収集の手段は主にSNSです。ツイッターでいわゆる“就職垢”と呼ばれる就職活動専用のアカウントをつくって情報収集しているようです。なかにはあまりにも有象無象の情報が流れてきているため「もう見る気もしません」という学生もいます。
またLINEオープンチャットには、たくさんの質問が流れています。ほんとうに些細なことまで質問があります。人事や採用支援会社の人が運営しているチャットがありますが、不特定多数の回答者がいるので全部確認してから進めようという動きがある印象です。採用の場面だけでなく、例えば内定承諾や辞退に関する質問もLINEのグループに流れています。
田中:
「細かなことも確認して進めたい」というのは、Z世代の特性とも言われています。小野さんはいかがですか。OfferBoxのユーザーの動向や過去との変化を比較しながら、何か質的変化を感じますか。
小野:
「大学生活で力を入れたこと何ですか」という質問をしても、バイトにも留学にも行けなかったので、「家でずっとフォートナイトしていました」という学生もいます。それだけでは合否が出しにくいというお話は確かにいただいていて、学生を見極めるという観点では難しくなっていると感じます。
OfferBox上の登録で、企業選びの軸に「就活にあたってどういう軸を優先しますか?」という質問がありますが、昨年から一番伸びているのが「フレックス制度を導入する会社かどうか」という回答です。また絶対数としては「育成環境が整っているかどうか」という回答がかなり増えています。
絶対にやりたいことがある、もしくは自分の就活の方向性にこだわる学生も少ないです。また学生時代のエピソードを聞いても薄く、学生を見極める人事泣かせな状況です。
谷出:
学生が気になる環境として働きやすさは確かにあるでしょう。ただ「リモートワークや在宅ワークを5日間ともしたい」という類の話よりは、自分に選択肢があって選べるようになっているかがポイントになっている気がします。例えば副業に関して言えば、社員全員がやっているかどうかではなく、解禁しているか否かが興味を持つきっかけとなります。全くダメとなるとその時点で興味を逃してしまう可能性があります。
学生と話をしていると「何かしたいわけじゃないけど、やりたいと思った時にできるような会社が良い」という話がよく出ます。禁止するにしても、企業がなぜ禁止にするかを伝えてあげたらよいと思います。そこに納得すれば面接に受けに来てくれるでしょう。
田中:
自分にとっての選択肢や働き方は重視しているけれども、「誰かのために○○したい」という観点が抜け落ちてしまっている。そこをしっかりと作ってあげられないと、社会人としてキャリアを形成していくことが難しくなっていく危機感を感じます。
弊社の調査によれば、'24 卒の学生は企業を選定する際に最終的な意思決定を1人では下さないとされています。「大事なことは頼りになる他人の意見を受け入れて決める」という意思決定が特徴的です。クチコミサイトなどを重視する学生が増えているのも、そういった意思決定構造があるからかもしれません。
谷出:
オンラインになり、実家に住んでいる学生が親の在宅ワークの様子を見るようになりました。そのため、コロナ禍が始まって以降、親が就活により影響するようになってきたと言われています。「今、お父さんは何の仕事をしているの?」と尋ねることをきっかけに就職の話をする。自営業の方の子供が家の仕事についてよく知っているのと同じ形ですね。
田中:
貴重なご指摘ありがとうございます。次のディスカッション・イシューに移りたいと思います。質的変化に企業としてどのように対処していけば良いのか、具体的な方法についてお聞ききしたいと思います。谷出さんいかがでしょうか。
谷出:
企業としての考え方を自ら発信することが大事だと思います。学生が大手志向で中小企業に面接を受けに来てくれないという話がよくあります。その際、私は企業に対して「学生から大企業じゃなく中小企業に入社するメリットは何ですかと聞かれたらどう回答しますか?」と質問します。企業選びの軸について共感を呼び起こすため、企業が率先して考え方を発信することで、学生は「なるほど」と感じるでしょう。つまり、学生に選ぶ軸を委ね過ぎないことです。
田中:
企業の情報を提供するだけでなく、考え方や観点もセットで伝えてあげないと学生は短期間で視野を広げて決めきれませんよね。
谷出:
コロナ禍によって学生時代に就職活動について学ぶ経験が少ない、すなわち高校生が企業選びをする感覚と近くなっていると考えれば、知っている会社や業界を選ぶようになるのが自然な流れだと思います。
田中:
適性検査の活用方法でも選考のためだけに使うのではなく、その内容を学生にフィードバックしてエンゲージメントを高める取り組みをされている企業も出てきています。学生も内容を知りたいという欲求が強いので、とても効果的だとされています。学生にどこまで寄り添い向き合うのかという論点もありますが、吉田さんはいかがお考えですか?
吉田:
どのような学生を採用しに行くかによって各社で取り組みに違いがあります。それぞれのケースをいくつか紹介しましょう。
まずThinkingsのケースですと、コロナ禍に入って「ガクチカ」(学生時代に力を入れたことを略した就活用語)に関して学生は苦労している姿が見受けられました。そこで当社では自社採用時にライフラインを活用しています。
まず応募者にこのフォーマットを渡して、生まれてから今日に至るまでの感情や幸福度のプラス・マイナス、どのタイミングで何があったのかなどを情報として提出してもらいます。それをもとに、落ち込んだ理由や復活できたきっかけ、意思決定のポイントなどを過去のライフラインから深掘りしていきます。これは期間が大学時代に限定されないので、応募者の考え方や過去の傾向からやりたいことへの本気度が確認できます。
また当社のクライアントの事例では、学生と向き合う方法として、学生と企業が対等であるということを基本に置いて成功している会社もあります。そこで取り上げたいのがUSEN-NEXT社です。
通常であれば最終面接の日時は企業が決め、そこに学生が合わせます。しかしUSEN-NEXTでは、最終面接の日時を学生に委ねています。他にも受けている会社があるでしょうし、最終面接には納得して来てもらいたいので任せるというスタンスです。ただそれだけだと「学生に寄り添っている」で終わってしまいますので、企業側の都合も情報として開示しています。また各ポジションの採用予定人数と、人数の充足状況もリアルタイムで発信しています。単純に学生に「いつでもいいよ」と伝えるだけではなく、自社の残りの採用人数を確認しながら検討してみてくださいというスタンスです。
かつては企業側が圧倒的有利で、嫌な言い方をすれば「採用してあげる」というスタンスだった時代もありました。しかし今ではそれは難しくなっています。USEN-NEXT社のケースは、互いに選ばれ選ぶ関係を構築している良い事例となるでしょう。
田中:
情報の透明性やフェアという言葉が重視される傾向が強まっていますが、現在の学生の価値観にとてもフィットするスタンスですね。
谷出:
似たような事例では、とある企業の'23卒採用ホームページでは、'22卒採用時の各選考フローの人数推移を全て公開しています。具体的には、エントリー数や、エントリーシートの通過者、その後の人数の推移や最終的な内定に至った数などです。
膨大な情報が出回るなかで学生が口コミに惑わされるケースがあります。しかし企業側が先に公開してしまえば、それが正しい情報と理解できます。クチコミサイトももちろん使えますが、企業側から採用活動に関する情報をオープンにすることで、今の学生からは共感を得られるのではないでしょうか。
昨今では情報を隠そうとすると炎上してしまうケースもあります。情報をオープンにして、迅速にすべて伝えていく。その姿勢が受け入れられれば、採用シーンにもつながると考えられます。
田中:
人的資本の潮流のなかで、パーパスの必要性が唱えられています。共感をいかに生み出すかが今後の採用において重要になってくるはずです。小野さんはいかがお考えでしょうか。
小野:
これまでと同じ方法では、いずれ採用できなくなると感じています。そこで、ある企業の取り組みを紹介させていただきます。役員との最終面接がある京都の中小企業の事例です。
同社では学生がなかなか集まらない環境のなかで、人事がなんとか最終面接まで通すのですが、そこで志望動機を聞いても学生側が全然答えられず、9割方アウトになったという悩みを抱えていました。「最近の学生はやりたいことが固まってないからダメだ」ということで落とされてしまっていたのです。
OfferBox経由で何年も採用していただいていた会社でしたので、今年の学生の傾向が違ったことを申し訳なく感じました。そこで適性検査情報を照合してみたのですが、実は傾向があまり変わっていないことが分かったのです。分析してみると、エピソードをもっていないという理由だけで落とされてしまう状況が発生しており、学生にとっても機会損失となっていました。
そこで人事の方と一緒に学生と面談しながら、自社の環境や応募者が輝ける方法について情報提供をしつつ、一緒に志望動機をつくっていきました。そして最終面接で、役員にその志望動機を伝えるという採用活動をした結果、採用人数が回復し、むしろ効率が上がりました。
コロナ禍だったからガクチカがなくても仕方ないという考え方ですと、そこ止まってしまいます。例えば、留学できなくとも自分で海外の方のコミュニティをつくり英語を勉強したという学生もいます。「コロナ禍だからかわいそう」「見抜けない」と括らず、環境の変化があった際にどう対応したか、もしくは以前はどういう人生を歩んできたかを見抜けるようにならないと採用が難しくなってきているようです。
田中:
最近は配属ガチャという言葉も広がるなか、配属確定採用の枠を増やしている企業もあります。仕組みで対応するというよりも、内面と向き合うアプローチの方が有効なのかもしれません。
田中:
質問をいくつかいただいていますのでご紹介します。まず「'24卒の学生は、ガクチカが弱い学生が多いということですが、面接ではどういった質問や手法で深掘りしていくと見極めできそうでしょうか?」という質問をいただきました。いかがでしょう。
谷出:
学生にとってライフラインも自己分析するためのひとつのツールです。価値観を表す単語が並んだ紙を見せて「このなかで自分が大切にしているものはどれ?」という項目にチェックしてもらい、そのうち3つに絞り「それを表すエピソードはありますか?」と問う方法です。
田中:
OfferBoxのプロフィールもそのような作り方ですね。
谷出:
また企業によって可否がありますが、インターンシップを選考のなかに組み込むのも有効です。最近ではウェブテストの問題が指摘されていますので、テスト、面接、インターンなどさまざまな側面からジャッジするのは有りだと思います。そして学生時代に限定せずに、コロナ禍での時間の使い方の変化を聞いていくのもひとつの方法です。
学生によっては“エピソード大会”になりがちですので、重要なのは何をもって自己PRとするかです。「コロナ禍になって自炊をするようになった」というようなエピソードではなく、日常生活での時間の使い方の変化や工夫したことなどが、その人の価値観の判断材料になります。
吉田:
面接時に何を見極めたいのかという目的にもよるでしょう。例えば、学生の考え方の根本をつかみたいのか、普段の行動から何か将来を予測したいのかなどです。
最近、当社で導入が増えているのが履修履歴や成績表です。授業を履修しようと思った理由や、実際にどのように過程を経てその成績になったのかという事実から、考え方や普段の行動を類推します。ガクチカ以外にも、考え方や普段の行動を知るための切り口や接点、聞き方があると思います。
小野:
構造化面接や質問項目の作り方などさまざまな情報がありますが、やはり一番重要なのは学生と仲良くなることだとひしひしと感じます。会って初日に、大人からいきなり生き方について問われても学生も良いところを出しにくいでしょう。
例えば先ほどお話した「フォートナイトを1日10時間やっていた」ということならば、どう飽きずにやっているのか聞いてみるのもよいでしょう。YouTubeで動画を見て自分なりにメモを残しているなど人間性が出てきます。あまり形式に捉われずに、とりあえず仲良くなるため関わっていくと採用しやすくなるかもしれません。
田中:
次の質問です。「説明会から接続率を上げる方法を'24卒の特徴もあわせてご教示願います」。
説明会からの接続率について、吉田さんは各種データを見ていると思いますがいかがでしょうか。
吉田:
かつては一回の説明会に足を運んでもって雰囲気を見てもらうことで、情報のインプットやインパクトがありました。OB訪問もリアルで会ってもらえましたが、今はなかなかやりにくいでしょう。ここ数年、基本はオンライン説明会が多いと思います。リアルと比べて一回ごとのインパクトは薄いですよね。そのためタッチポイントをどれほど用意できるかがまず重要です。説明会後から面接までの間に座談会を設けたり、メルマガやLINEの公式アカウントで連絡を取るなど情報発信をしていく方法もあるでしょう。
田中:
次の「'24卒はオンライン上での活動が根強くなっているが今後、会社説明会など、対面式に戻していくことは効果としてはどうか」という質問についてはいかがでしょうか。
吉田:
やはりインパクトは強いと思いますので、やれるのであればやった方が良いのではないでしょうか。ただ当然のことながら足を運べる方の人数が減りますし、地方学生への対応も検討する必要があります。リアルでもオンラインでも開催するというのが、応募者側にとってはベストかもしれません。
田中:
「'24卒でお勧めの求人媒体と求人方法があれば教えてください」という質問も来ています。
吉田:
業界や採用人数、採用しているチームのリソースなどさまざまな要素が絡むので、これと一概に言うことは難しいと思います。
小野:
採用ツールに関しては、希望する採用の方針が全て定まったのち最後に決まるものです。質問者の方にヒアリングできればオススメの媒体などお話しできると思います。
田中:
i-plugでは小野さんたちと一緒に議論して設計していますよね。
小野:
はい。当社ではDMP設計や1to1設計という名称をつけさせていただいています。学生一人にかける時間やタッチポイントを増やしていかないと採用がうまく進まない市場になってしまっているので、誰にどのくらい時間をかければ良いのか一緒に見極めます。同時に媒体の検討も行いながら、伝えたいメッセージや集めたい学生の対象化も一緒に設計させていただいています。
田中:
続いて谷出さんにぜひご意見いただきたい質問です。「‘24卒の採用スケジュールは実際どうなっているでしょうか?」。これは選考の早期化などに関する質問となります。
谷出:
'23卒より選考の早期化は進むと思います。指標として3月の広報解禁時の内定率、6月の選考開始の内定率は、昨年を上回るペースになるのではないでしょうか。背景として今夏のインターンシップを実施する企業が増えたことがありますし、もう既に内定を出している企業も出始めています。企業の採用意欲も回復傾向ですし、'23卒は充足率が低く、当初予定していた人数を採用できていない企業は必然的に早める方向に進むでしょう。連動する形で全体的に早くなる傾向になると思います。
田中:
一方で学生の動きとしては、'23卒と比べると‘24卒の動き出しは遅くなってきており、本選手前の時期から一気に忙しくなる気がします。
パネルディスカッションのパートは以上とさせていただきたいと思います。
最後に谷出さんからコメントをいただいて終了とさせていただきたいと思います。
谷出:
採用活動は毎年のルーティン業務に感じることも多いかと思いますが、学生からすると初めての就職活動です。育ってきた時代背景によって考え方や価値観が変わってきています。
一回ごとの取り組みを大事にして、一人ひとりに向き合うことが今後さらに大切になってくるでしょう。
学生の情報を取得する方法としては、若者研究をしている人にヒアリングする、大学に潜り込むなどさまざまなやり方が考えられます。学園祭に行ってリアルな学生の姿を見ることが個人的にはオススメです。普段の学生を知ろうとすることで今の学生が何を考えているのかを理解する機会も増えます。ぜひ行動していただいて、採用活動だけではなく、学生の就職活動の支援、キャリア支援につなげてもらえば幸いです。
田中:
本日はありがとうございました。