厚生労働省は企業の中途採用を促進するために、「中途採用等支援助成金」の制度を設けています。
特に1993年から2004年頃に就職活動をしていた就職氷河期世代の雇用促進をはかるもので、いくつかの条件のもとに最大100万円が助成されます。
助成金が受けられる企業の要件や就職氷河期の人材の活用について、ここでご紹介していきます。
厚生労働省が続けている「中途採用等支援助成金」は、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用の拡大を図る事業主に対して助成するものです。
まず、助成額とその要件をみていきましょう。令和5年4月1日時点では、主な枠組みは次のように定められています(図1)。
(出所:「中途採用の拡大に取り組む事業主の皆さまへ 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)をご活用ください」厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001083164.pdf p1
これに加え、以下の2点を満たすことが必要です*1。
(A)と(B)の大きな違いは、(B)のパターンでは就職氷河期世代の中途採用・雇用条件の改善の意味合いも持っている制度だという点です。
助成の対象となるのは、以下のすべての条件を満たす労働者です*2。
では、(A)と(B)それぞれの制度についてみていきましょう。
具体的な要件と申請方法は以下のようになっています。
まず、(A)の「中途採用率の拡大」の場合です(図2)。ポイント計算は以下の基準に依拠します。
(出所:「中途採用の拡大に取り組む事業主の皆さまへ 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)をご活用ください」厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001083164.pdf p2
そして、申請の流れと助成金の申請期間は下のようになっています(図3)。
(出所:「中途採用等支援助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-」厚生労働省0
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001081775.pdf p12
まず中途採用計画の届出が先です。そして計画期間中に中途採用率を目標値(プラス20ポイント)まで拡大し、その後6か月の間、その労働者を解雇しないという要件を満たすと、その後2か月以内に助成金の申請ができます。
45歳以上の中途採用率を拡大させる(B)の場合、ポイントの算出方法は下のようになります(図4)。
(出所:「中途採用の拡大に取り組む事業主の皆さまへ 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)をご活用ください」厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001083164.pdf p2
そして申請の流れと助成金の申請期間は下のようになっています(図5)。
(出所:「中途採用等支援助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-」厚生労働省0
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001081775.pdf p12
(A)の中途採用率の拡大同様、まず中途採用計画を作成し届け出るところから始まります。
そして図中、計画期間の1年の間に中途採用率、そのうちの45歳以上の対象労働者について10ポイント上昇させることが必要です。
さらに要件があります。計画期間の就労後6か月の間、雇い入れた当該の45歳以上の労働者について、賃金を前職より5%以上、上昇させる必要があります。
この2つの要件を満たした上で、その後2か月以内に助成金を申請します。
政府は「就職氷河期」を浪人・留年などをしていない場合2022年4月時点で大卒の概ね40~51歳、高卒で概ね36~47歳としています*3。
そして内閣官房によると2021年では1685万人が該当します(図6)。
(出所:「就職氷河期世代の就業等の動向」内閣官房(令和4年5月)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_hyogaki_shien/suishin_platform/dai4/siryou1.pdf p1
この中で課題とされているのが、正規雇用を希望しているものの、やむを得ず非正規で就労している「不本意非正規」雇用労働者の存在です。上の図6を見ると、2021年では40万人が該当しています。
氷河期世代は、本人の能力よりも時代背景によって働き方を左右されてきた人たちと言えます。この40万人、なかでも転職意向を持つ人の力をうまく発揮するというのも、人手確保のひとつの考え方かもしれません。
この制度では、計画の期間が重複しなければ「中途採用率の拡大」と「45歳以上の中途採用率の拡大」両方のコースを同時に提出することも可能です*4。
両者を組み合わせた計画的な人材採用を実施することもできるでしょう。
新卒採用がそうであるように、中途採用もまた候補者の争いは厳しさを増していきそうです。その時に利用できる制度のひとつとして、今回の助成金について知っておきたいものです。
なお、詳細な問い合わせ先は都道府県労働局もしくはハローワークです。