「なかなか、いい人が採れなくて……」
そんな声を聞くことは、少なくありません。
2020年代は、新型コロナウイルスの影響による採用縮小を経験しつつも、基調は売り手市場と見られています。
本記事では「求人広告の書き方」に着目して、採用成果を上げる戦略を考えていきたいと思います。
最初に、そもそも求人広告とは何か、基礎知識から確認しておきましょう。
求人広告は大きく5種類に分けられます。
特徴 | |
ハローワーク | 求人企業も求職者も無料で利用できる |
新聞・雑誌の広告欄 | 広い読者、または特定のターゲットにリーチできる |
求人専門誌 | 知名度が高いために、広範囲の層に訴えやすい |
折込みチラシ | 地域限定で配布されるため近隣者の採用に強みがある |
インターネット | 専門の求人サイトに広告を出す手法が主流となっている |
それぞれの特徴と自社で獲得したい人材の兼ね合いで、媒体を選んでいきます。現在は、インターネット経由の採用活動も盛んになっています。
求人広告には、おもに以下の情報を掲載します。
- 企業情報データ
- 採用条件(保有資格や特定業種の経験の有無など)
- 雇用条件(雇用形態、給与、昇給、昇格、賞与、手当て、勤務時間、休暇、試用期間、福利制度など。また、給与や賞与に幅がある場合は、その背景またはモデル月収などを明記)
- 採用スケジュールや採用後の研修スケジュールなど
求職者は、企業情報データや各種条件を見て、魅力的だと感じた求人に応募する仕組みです。
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求人広告は、採用活動の成否を分ける重要な要因です。
求人広告がうまく機能していないと、どんな問題が起きるのでしょうか。
まず、応募者数の母数がとれないので、採用活動が難航します。これは切実な問題です。
ファネル上部の人数が少なければ、ベストマッチな人材に出会える確率も減ってしまいます。
限られた人数の中で行われる選考では、採用自体を見送らなければならないことも、少なくありません。
応募者数を確保できても、離職率が悪い求人広告は、機能しているといえません。
求人広告は、求職者のエクスペクテーション(期待値)を形成するものです。
広告によって形成された期待と、入社後の実態の差(ギャップ)は、満足度(あるいは不満足度)のファクターとなります。
たとえば、求人広告で過剰な期待をあおった場合、
「入社前に想像していたのと、入社後の実態が違う」
という失望の感情が生まれ、離職率が高くなるのです。
筆者自身、企業での採用活動では、求人広告で多くのつまずきを経験しています。
さまざまなテストを重ねながら試行錯誤を続け、応募者数・離職率を改善していきました。
以下にそのポイントをご紹介したいと思います。
1. 会社紹介を書くときに他社を参考にしない
2. 職種別の要件は現場の担当者が書く
3. 職種名にキーワードを入れる
4. 面接でよく聞かれることを書く
5. 悪いことも誠実に書く
6. チームメンバーに確認してもらう
7. 応募者にフィードバックしてもらう
1つめのポイントは「会社紹介を書くときに他社を参考にしない」です。
求人広告に限らず、優れた広告のカギは「こちらに振り向いてほしい、適切な人たちの注意を、確実に引く」ことにあります。
その第一歩となるのが、会社を紹介するコピー文です。
効果の出ない求人広告は、他社の求人広告を参考にしながらコピー原案を作っていました。
結果として「他社と代わり映えのしない、ありきたりな広告」になっていたのです。
そこで、あえて求人広告の世界をまったく知らない、商品のマーケティング担当者とコピーライターに会社紹介を書いてもらいました。
会社の魅力を「明らかに他社とは違うユニークさ」で表現することで、注意喚起力が高まったのです。
2つめのポイントは「職種別の要件は現場の担当者が書く」です。
それまで、職種別の要件は、採用担当者が取りまとめて文章にしていました。
しかし、募集職種に何が必要なのか、その職種に応募する人たちが何を知りたいのか、知っているのは現場の担当者です。
職種別の要件は、現場の担当者が書くルールに変更しました。
職種によってフォーマットが違って、体裁は整わなくなりましたが、見た目よりも中身重視で気にしないことにしました。
この改善によって、
「現場が来てほしいと思っていた即戦力」
の採用力が高まった実感があります。
3つめのポイントは「職種名にキーワードを入れる」です。
これはインターネットの求人広告や、自社サイトに掲載する求人ページの、テクニック的なお話になります。
「カタカナでかっこいいけど、何をするのかよくわからない職種名」はやめました。
その代わり、
「求職者は、どんなキーワードで仕事を検索するだろうか?」
と考えて、そのキーワードを職種名に入れることにしました。
たとえば、「Webマーケティング」で転職を考えている人は、「Webマーケティング」のキーワードで検索します。
そこで職種名に「Webマーケティング」を含む、という具合です。
4つめのポイントは「面接でよく聞かれることを書く」です。
求職者の立場になって考えたとき、親切な広告であるように目指しました。ここでいう親切とは、「知りたい情報が掲載されていること」といえます。
具体的には、面接でよく聞かれることを、できる限り求人広告に網羅しました。面接でよく出る質問こそ、知りたい情報と考えられるからです。
たとえば「1日の仕事の流れを教えてください」という質問が多い職種では、1日の流れがわかる図解を入れて工夫しました。
5つめのポイントは「悪いことも誠実に書く」です。
広告を“巧く”作るほど、ファネル上部の流入人数は増大するのですが、今度は期待値が上がりすぎるリスクがあります。
前述のとおり、期待値が上がりすぎるとギャップが大きくなり、離職率が高まります。
そこで心掛けていたのは、正直さです。都合が悪く見えることも隠さず、開示を心掛けました。
たとえば、
「今期は競合他社に押されてシェアが下がっているので、巻き返すために新しい戦力を求めている」
「組織改編に伴い、離職率が高まってしまったため、長く一緒に働ける仲間を募集したい」
といった内容を、そのまま書くのです。
結果、真にマッチ度の高い人材との出会いが増えたのが印象的でした。
6つめのポイントは「チームメンバーに確認してもらう」ことです。
求人広告がうまく機能していなかったときは、経営陣と採用担当者だけで広告内容を確認していました。
ほかの社員は、どんな広告が出稿されているのか、知らなかったのです。
この体制をやめ、求人職種のチームを中心とした複数のメンバーに広告原稿を事前共有し、率直な感想を述べてもらうようにしました。
この効果は絶大だったと感じます。そもそもチームメンバーは、かつての求職者たちです。広告の受け手の気持ちがわかるために、改善点の指摘は的確でした。
7つめのポイントは「応募者にフィードバックしてもらう」ことです。
求人広告経由の応募者には、面接の最後に、広告に関するフィードバックをお願いしました。
「●●の広告をご覧になってご応募いただきましたが、わかりづらい点はありませんでしたか?」
「どんなポイントが印象に残りましたか?」
といった質問を投げかけます。
応募者からのフィードバックをもとに改良を重ねることで、社内の目だけでは気づけない隅々まで、クオリティを上げることができたのです。
本記事では「求人広告の書き方」をテーマにお届けしました。
近年では、自社のコーポレートサイトやSNSを中心として採用活動を展開する企業も増えています。そういった採用活動にも、本記事でご紹介したエッセンスは有効です。
ぜひ参考にしていただきながら、有意義な採用活動につなげていただければと思います。